いち客演の独り言①

11/3~5 全5+1ステージの舞台出演が終わりました。
公演そのもののまとめやお礼の記事は別に作ろうと思っています。
この記事では主に私個人の思いや考えなどをつづります。(鬼の長文)

台本の第一印象

稽古参加初日、台本をまず手渡され、役名を告げられ、目を通す間もなく
本読み稽古に突入したため、音読しながら内容を理解していく…
という状況だった。もちろん先がわからないのでここの台詞ってどんな気持ちなんだろうというような
感情や状況の理解が追い付いていないのももちろんなんだけど、一番たまげたのはやはり
ケイの「ユキさん綺麗~色っぽい~」というセリフを見たとき。
目玉が飛び出るような心境だった。やばいことを引き受けてしまった…と思った(笑)
(綺麗…か…?)と思われる回数を減らしたくて、お稽古ではめったにマスクをとれなかった(笑)
醜形恐怖症一歩手前、(本番ではメイク頑張るから許して~)というマインドでした。


そして、わかっていたようでわかっていなかったのが「長い!!」
今まで経験した舞台ってリーディング公演かつ最長40分程度のものだったので、あらためてフル尺の舞台の台本の厚みにちょっとビビりました。
そして、台本には最低限のト書きしかないため、ただ読んでいるだけでは各キャラクターの台詞の動機とか「欲求」がなかなか見えない。
稽古が進んでいくまでハルとナツがごっちゃになったりしていたくらい。
でも役者さんが各々自分の役を深堀りして演技の完成度を上げていくにつれて、台本の文字からは見えていなかったものがどんどん見えていく。このプロセスには結構感動しました。
ちなみに「役の欲求」という言葉は、8年ほど前に北川先生に演技を教わっていた時によく聞いた言葉。
今回のお稽古では耳にすることはありませんでしたが、自然と思い出して、自分の中で大切にしたい言葉になりました。
自分の役はその時に何を感じ、何を求めるのか、どうしたいのか、それをしっかり考える事が重要なんだね。

クソみたいな個人的な欲求との闘い

こんなこと赤裸々に書くのも恥ずかしいけど、結構長いこと闘ったので戒めにつづっておく。
私に与えられたロボットの役。
経験皆無のほぼ素人に与えるにしては、重要な役割を与えてくださったと思った。
と同時に、「この役で伝えられる横濱ヱリカの魅力」について考えた。
ロボットといえば、抑揚の少ない、端的に言えば「棒読み」的な台詞回しと、カクカクした動き、という固定観念が私にはあった。
そして、そのどちらも、演技力をあまり必要としないのでは、と思った。
私がやっても、完全素人の方がやっても、大して仕上がりに差はないのでは…と。

加えて私の役の特徴を「ドラマとかでもよくある、綺麗でちやほやされるだけの役」という型にはめて考えてしまったので、要は「ビジュアルだけ要員」みたいな印象をもっていた。
つまり、今回は横濱ヱリカの「中身」や「演技力」的なものを披露できないのだな…
というしょうもない考えから抜け出すのにかなりの時間を要した。
そんなものさして無いし、誰も求めていないのに。

そう。まじで誰も求めてないんだよそんなものは。
まず求められているのは話を成立させるための役割の全うなわけで。
それができていないうちから欲を出してもただただ出たがりの下手な役者にしかならないのに。
そんなことが、頭でわかっていても、深層心理に残ってるもんだから、
リセット前のユキの話し口調をより自然なものに寄せたいなあという気持ちが強くでちゃったり
「口調も動きも明確にロボットっぽくしてくれ」というオーダーをされたときにがっかりしちゃった。恥ずかしい。

先輩の背中を見て

今回「ロボット」になるにあたって私がイメージしたのは
新スタートレックのデータ少佐である。


アンドロイドの視点、欲求、行動動機、しぐさなど、イメージの根幹にあるもの。
改めて見返すとかはしなかったけど、なんとなく随所でデータのことを思い浮かべながら動きを作っていった…気がします。
ちなみに、所謂ロボット、人造人間のことを「アンドロイド」と称することがこれまで多かったと思うが
昨今では「シンス」と言うようです。
スタートレックでも、最新のピカードでは「シンス」という表現が多い。訳が変わっただけなのかな。

そして、「参考」にさせてもらったのは言わずもがな、他の諸先輩方の演じる個性豊かなロボットたち。
前述の「素人がやっても大差ない」みたいな考え方は大間違いだとすぐにわかった。
動き、発声はそれぞれの個性の解釈に基づいてされているので真似はしなかったけど
ロボットという役への向き合い方とか台本の解釈の仕方とか、かなり参考にさせてもらった。
特に、ふちがみさんのハルを見て学んだことは多い。
…という話をふちがみさんにしたら、ふちがみさんは梅谷さんのトラを参考にしていたとのこと。
連鎖している…!
でもこんな立場の似たキャラクターでお稽古中に他の役者さんの解釈が参考になることなんて、普通、ダブルキャスト以外ではなかなかないのではないかな。
近い立場のキャラクターがいて、それを演じていたのがキャリアのある方たちだったので自分の持ってる以上のことができたなと思っています。
ふちがみさんは前回のリーディング公演でご一緒した時から人あたりは良いし面倒見も良いしで大好きだったんだけど、今回まじでめちゃくちゃお世話になったし頼らせてもらった。
舞台上での体のさばき方とか立ち位置とか、どうしたらよいかわからず戸惑っているとさっと察して助言してくれたり。質問しても丁寧に教えてくれるし。
ビッグラブである。
役者さんってみんなそんな感じなんだろうか。若手の時に先輩にしてもらったように下の子たちを面倒見て、それが連鎖していくんだろうなあ。
網元さんも、頼りがいがあって、姉御肌気質ではあるものの、ユーモラスなところもあって、でも開演前に緊張している姿も隠さず見せてくれて、勝手に大好きになった。
役になぞらえて「ママ」と呼んでいましたw

衣装小話

最初に衣装を与えられたときに、体のラインが隠れる洋服が苦手すぎてウエストとか詰めようかなと思ってしまったが、介護作業のための洋服、なるべくだぼっとしたもの、というコンセプトだったのであれで正解なんですよ。つめてはいけないwww今となってはしっくりきています。
舞台で着る衣装って、ライトで飛ぶから暗めとかしっかり色がついているものが良いのですね。
衣装決めの時にみなさんやたら色が暗いなあと思いながら見ていたけど、後々納得しました。

ユキのリボンは白のレース、片方だけ、などいろいろ試した結果あのような形に落ち着きました。
久しぶりにユザワヤに行きました。かわいい資材がたくさんで楽しかった。


私的にはこのリボンはユキ(人間)の形見だと思っています。
リセット後、自分がなぜこのような機能性のない装飾品をつけているのかが理解できず、外してしまう。
それを見て密かに傷つく翔馬…を想定していました。
舞台2日目くらいから、やっぱりリセット後にもつけておきましょうというディレクションがあったのでずっとつけてましたが、外していた時もそれはそれで理由があったんだよ!と言っておく。

ちなみに写真たての写真はこれです。稽古場の近くの公園にて。

やらかしエピソード。

なにせ舞台経験も役者経験もほぼゼロなのでいろんなことがよくわからずふわっとした状態で乗り切っていたのですが。ひとつおおきくやらかしたのが「演出に相談せずに本番でそれまでと違う行動をする」ということ。
リセットされたユキが、ナツに怒鳴られても委縮せずにケロっとした態度で去っていくシーン。
以前より、ナツの「何あれ…」というセリフをより自然に引き出せるような腹のたつ去り方を…
とオーダーされていたので、毎稽古、毎公演「こうかな?」「ああかな?」と動きの試行錯誤をしていた。
本番2日目くらいで急にピンと来て、「ナツの物まねをしたらめっちゃ腹立つよね。」と思い立った。
ユキとしてはそれまでの「真似をすると面白い」の復習をしている。
ナツからすると「急に子供のフリをはじめたぶりっこ同僚が最大限におちょくってきてる」という感じになるかなと。
でもそれまでには全くなかった動きで、練習をしてないからうまくできる気もしなかった。
一応ナツの服部さんにセリフのタイミングなど聞いておいて、邪魔にならないタイミングを頭のなかで組み立ててみたけど…うーん…もうちょっと組み立てたほうがいいかな…どうしよう…
「ぱっと出てこなかったらしないかもしれません」とあいまいに服部さんに伝えておいたんだけど
本番で結局ぱっと口から出てしまった。
結局練る時間も甘く、てんぱって真似ですらない中途半端なできにはなるし、
周りの先輩からは「ちゃんと事前に演出に確認した?」と心配されるし、
演出からも「やることは良いけど先に確認した方が良いよねえ。本番ぶっつけでやるのはお行儀が良くないかなあ。」と優しくご指摘いただくわで…、ほんとしょーもないことはやるべきではないなあと痛感。
やるべきではないというか、稽古期間に思いついて本番までに洗練させていくべきだった。
スタートが遅かった…。
とにかく「やらかしたぁ~」という思いが強かったのと、改めて演出にどう思いますか?と聞いたときに
悪くないけどね~…という反応だったので、しょんぼりしてしまって、その次の回ではそれまでと同じように
ダンテの仕草の反復をしながら去るという方法に戻しました。
が、その後「アレさっきやってなかったじゃん。やってよ。」とおっしゃっていただけたので
今度はシミュレーションをさらに重ねて実行。
千秋楽の段階で、やっと納得がいく感じにできたかなあと思っています。
もっと事前にしっかり練って練習できていればなあ。後悔ポイントです。

死体役の葛藤。

完全に沈黙したあと、最初は目を見開いていて、翔馬が早い段階で瞼を閉じてくれるという段取りだったんですが
お稽古の時は閉じるのを忘れ去られて目の乾燥と戦ったりしていましたw
あと最終日、袖で像さんのペットボトルを見て爆笑してから舞台にあがったため、死体としてぼんやりしているときに急に記憶がよみがえって腹筋が痙攣しそうになって大変でした。
おなかが派手に上下しないようにゆっくり息したり、意外と全身に力が入っていて、寝ころんでるだけとはいえなかなか大変だった…と言っておきたい。
割と長い間横になっていて、転換で急に立ち上がるので、毎回立ち眩みでフラフラしちゃうのも戦いでした。
(そもそも台上の幅が狭いのもあってスタッフさんみなさん最大限気遣ってくれたため安全に動けました)

感想って嬉しいね。

初日に見に来てくれた養成所同期と同期の奥様が感想お茶会をしてくれた。
ノート3ページにぎっしり感想など書いてくれて、細かいところまで見ててくれて嬉しかった。
「声と体の演技がリンクしていて、解離・破綻していない」という素敵な評価をもらったのだけれど
それでいうと自覚している破綻箇所が一か所だけある。
一番はじめのシーンで、ママとロボット4人でのあいさつの練習が終わった後。
ガーンガーン!という破壊音に反応して一同が振り返るのだけれど、その時にどうしても振り返った方向の腕だけまげてしまう癖があった。
ロボットとしてその人間的な左右非対称なポージングはおかしいとわかっていたのに
どうしても矯正できなかった。お恥ずかしや。
良かったというお声が多かったのは倒れるシーン。小屋入りの時に音響さんが持ってきた音を聞いて
音に合わせた痙攣を取り入れたけど、いい感じに不気味だったみたいで嬉しい^^
最初にやってみた時、ふちがみさんがすぐに気づいて「さっきのすごく良いと思います」とほめてくれて、
めっちゃ見ててくれる…ビッグラブ…ってなりました。(語彙力の消失)
さすが人気の老舗劇団さん、X(旧ツイッター)でも感想などつぶやいてくださっている方がとても多くて、楽しく読ませていただきました。
ありがとうございます。

楽しい舞台袖

舞台袖(主に下手)のゆかいなみなさん
・回をおうごとに派手になっていくハルさんのケチャップ。最終日は「食べたよね?」ってボリュームになってて面白かったです。すぐに出番があるので写真を撮る間もなくとっちゃうのがもったいない…w
・ママがハルを呼んできてといわれていったん袖にハケたとき、必ず笑顔でばっと両手を開いてハルおいで~ってして、ハルも両手を開いてテテテテ…とママの方に駆け寄る、という小芝居が毎回行われていてまじでかわいくて大好きでした。
・ハルの掃除機の音で川口が半狂乱になるシーン、袖では服部濱田ペアも一緒にパニックになっててじたばたしててとてもかわいかったのでこれも全人類に見てほしかったですね。
・これは聞いた話ですが、ユキが突き落とされて翔馬が「誰がこんなことをっ!!」と舞台上で叫んでいるその時、袖にいるナツがニヤ…と笑いながらそっと片手をあげていたそう。(桜木談。)悪いヤツだ!!